sealer del sol (シーラーデルソル)

Guapo!WEBマガジン[グアッポ!]

vol.31

世界を目指す高校3年生の
プロウェイクボーダー。

プロウェイクボーダー吉原陽向

photographs / WWA Wakeboard world championships,Wakeboarder. Magazine,Shuji Tonoki
text / Masahiro Ikeda

小学生から選手活動を続け、多くの注目と活躍を重ねてきた。
2017年のWWAアジア大会での優勝を経て、
世界を目指す女子高生プロウェイクボーダーの今。

Episode1

プロウェイクボーダーだった父(※1)に連れられて、幼少の頃から地元広島県尾道の海で水遊び、ボート遊びをしていた。その頃から家には父が練習するウェイクボード専用ボートがあり、ウェイクボード環境は抜群だったが、幼少期はウェイクボードに全く興味がなかった。むしろ普通に友達たちと海で遊ぶのがメチャ好きだったと言う。

小学3年生ぐらいの頃に、父とウェイクボードの道具を買いに行ってウェイクボードをはじめることになった。とは言え、最初はすごく怖くて、やりたくなかったのを覚えている。そのうちまわりの友達と一緒にウェイクボードをやるようになっていたが、あくまでレジャーの一つとして遊んでいた。

そんな吉原陽向にウェイクボードの火が点いたのは小学4年生。はじめて出場した大会で4位になった時だった。「あと少しでメダルがもらえたのに」という悔しさから、競争心や負けん気が芽生え、それからウェイクボードをちゃんと頑張ろうと気持ちが切り替わったと言う。

※1 父は、プロウェイクボーダーの吉原照正。現在は地元広島でウェイクボードショップも経営。


Episode2

中学生以降は、学校が終わる頃に母に車で迎えに来てもらって、ほぼ毎日のように練習に明け暮れた。学校との両立、同級生と一緒に遊ぶ時間も限られ、「正直辛い時もあったし、やめたい時もあった」と今なら冷静に振り返られる。その頃には大会で会う違う地域の同年代選手との交流も深まり、ウェイクボードで知り合った友人たちと大会で会えるのも楽しみになっていたし、その子たちにも負けないように頑張るようになっていた。「そんな友人でありライバルの存在がウェイクボードを続けてこれた原動力だと思う」と語る。

その後プロに昇格し、「それまでのアマチュアのような滑りを見せるわけにはいかない」というプロ意識や自覚も芽生え、またサポートしてくれるスポンサーの期待にも応えたいという気持ちがさらにウェイクボードに対して真剣になれたそうだ。 「日々練習を重ねていて、新しい技ができるようになったりするのは本当に楽しい」とプロになってからも「楽しさ」を忘れていない。

過去の戦績で、プロ1年目に琵琶湖大会で2位になったことと、2017年のイケダ湖のアジア大会で優勝したことは、多くの結果を残してきた中でも記憶に残ると言う。もちろんプロ1年目の2位はアマチュアからプロの世界に飛び込み自分が通用したという嬉しさ、アジア大会での優勝は日本国内を超えた中での優勝という喜びだったことだろう。

Episode3

女子高生とプロウェイクボーダーを両立する日々に、ウェイクボードを続けてきたからこそ感じる瞬間があると言う。電車に乗っている時に車窓の風景の中で、川や海、湖が見えると「ここ面がイイな」(※2)とウェイクボーダー特有のことを自然と気付いたりする。

「私はホームゲレンデが海なので干潮や満潮の時間もいつも頭に入っています(笑)」と絶えず自然のリズムとともに過ごしているし、前の日の天気予報を見ながら翌日のゲレンデの状況を想像したりするのが日常らしい。

「ウェイクボードは水の上を滑るスポーツ。その上で波(※3)をジャンプして技をしたりするんだけど、とにかく水の上を滑るのは本当に気持ちいいし、もちろん危険な部分もあるけど、技ができると達成感を感じることができる。それに大会で行くような、いろいろな湖や川、海などどこでも楽しめるのがウェイクボード。それぞれのロケーションが違うところで自然を感じながら全部を楽しむ最高のスポーツです」とウェイクボードの魅力を友人や、まだやっていない人に伝えたいという想いも強い。

※2 ウェイクボードを楽しむ上で、水面が風や波で荒れていない鏡のような場合「面がイイ」と表現する。
※3 ここで言う波は、ウェイクボードをする際に使うボードの曳き波(ウェイキ)のこと。


Episode4

「最終目標=世界チャンピオン」。陽向の目標はやはり世界のトップ。2018年の8月30日から9月2日までWWA(※4)の世界選手権大会が徳島県三好市で日本初開催された。そこで自分の力がまだまだだと感じたと言う。「高校を卒業したら本場アメリカに行こうと思っています。一番ウェイクの盛んなところでウェイクボードをしたいんです。そしてもっともっと上を目指したいです」。

そして、「大会で勝つために必要な技術ももちろんなのですが、大会への気持ちの持っていきかたが重要だと思っています。レベルの高い大会で自分が焦ってしまったりして自分の力を発揮できなかったりするので。だからメンタル面も含めてもっと成長したいんです」とアスリートとして今の自分と向かい合う。

小さい頃、必ずしもウェイクボードをやりたくて始めたわけではなかった少女が、個人としても選手としても大人への階段を上り、トップアスリートとして世界を目指す段階となった。まだまだ伸びていくであろう、これからの彼女の未来に期待したい。

※4 WWA=The World Wake Association

Profile
吉原陽向 Hinata Yoshihara

国内戦では今年度全勝中。2018年のJWBAプロツアー、 1戦目 Mather Lake Biwa Cup1位、2戦目 Lake Yamanaka1位、3戦目 Ashiya. 1位。昨年からの国際大会でも多くの優勝を勝ち取っている。2017年 iwwf Hong Kong fest 1位、2017年 WWA wake series in IKEDA 1位、2018年 WWA ASIA IN MACAU 1位、2018年 WWA ASIA IN TAIWAN 1位、2018年 WWA ASIA IN KUMAMOTO 1位、2018年 WWA WORLD CHAMPIONSHIPS 7位。

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