sealer del sol (シーラーデルソル)

Guapo!WEBマガジン[グアッポ!]

vol.12

「トライアスリート」+「エグゼクティブ」+「タレント」=『スポーツナビゲーター』
トライアスロンの魅力を伝えるべく、世界中を飛び回る。

スポーツナビゲーター白戸太朗

『トライアスロンを広めたい!』の一心で、現役トライアスリート・会社代表・タレントの三役をこなし、
365日24時間世界中を飛び回る「トライアスロン界の至宝」白戸太朗さんにお話を伺いました。

トライアスロンを始めたきっかけ

学生時代はクロスカントリースキーの選手でした。学生がやるスキーは、実際スキーを履ける期間が長くて半年くらいしかないんです。つまり、かなりがんばっても年間の半分はオフトレーニングなんですね。クロカンのオフトレは走ったり上半身を鍛えたりとかハッキリ言って単調で辛い。何かオフトレのカンフル剤みたいなものはないかと探していた時にたまたまトライアスロンに出会ったんです。最初はもちろんスキーのトレー ニングのためだったのですが、スイムもバイクもランも一生懸命やって結果的にスキーにいい影響が出た。でもトライアスロンでリザルトが出るようになったらだんだんそっちの方が楽しくなってきて、いつの間にか主客が逆転してしまいました。

トライアスロンの魅力とは?

27年、5~600レースやってきて、その中で満足できるレースなんて両手で数えられるくらいしかないです。
ただえさえ時間が長く(最短でも3~4時間、アイアンマンレースは10時間以上!)やることが多くて色々なアクシデントが起こる可能性がものすごく高い競技です。当然いいことも悪いこともたくさんあって、それを自分で立て直したり切り替えたりしてゴールまで導いていかなくてはならないところがすごく難しい、けど面白い。簡単に答も出ないですし。トレーニングも同じで、3種目ばっちり練習したらカラ ダが壊れちゃう。時間も体力も限られている中で、どういうバランスでどうやったらいいかは人によっても違うし体調によっても違うし。簡単にできないからこそ面白いし深みがあります。簡単に答が出るようなものだったら、多分ここまではハマっていないと思いますね。今でもその答えは「探求中」です。

長い競技時間、
どうやって集中力を保つのですか?

そんなずっと集中しているわけではないですよ。意外と周りも見えているし、冷静です。特にいいレースができている時は、「ゾーンに入っている」状態です。普段、特にアイアンマンレースの時は、そんなにピリピリ集中しているわけではありません。確かに持久系の競技なので、コンディションが悪い 時は当然大変で、そんな時に自分の緊張感が切れると一気にダメになってしまいます。「普通だったら絶対ダメ」という中でやらなければならない時も 当然あります。そういう時は「一瞬でも気が抜けたら終わっちゃうな」というのがわかるので、自分を鼓舞しながら、でも冷静に、を心がけています。

アスロニアを立ち上げたワケ

トライアスロンをずっとやってきて、エグゼクティブの友人がたくさんできました。その付き合いの中で、「太朗がやっていることはすごく必要だ。でも個人でやっているとできることに限界がある。組織化してちゃんとやりなよ!」と言われて始まったのがアスロニアです。特別に「事業をやってやろう!」と 思って始まったものではなく、「トライアスロンを世の中に広めたい」という自分が今までやってきたこと、やりたいことをもう少しちゃんとやるために会社にしただけです。なので根っこというか芯はまったく変わっていません。

アスロニアには3つの事業の柱があります。
1つ目は「入口」。スポーツをやる時に、入口がちゃんとないとわからないですよね。特にトライアスロンはネッドも書籍でも情報がないから、やる気はあってもどうしたらいいか全然わからない「トライアスロン難民」のための「場所」とか「組織」です。もちろんモノも売っているけど、それ以外にもここで色々な情報が行き交えばいいなと思っています。2つ目は「スクール」。情報を得て道具を揃えたら次は教える人が必要です。東京大阪京都の7ヶ所で スクールをやっています。3つ目は「大会・イベント」。スクールで勉強すると、目標が必要で、発表の場が欲しいじゃないですか。 実際我々がその機会を実現するためにイベント部門があります。主催している大会がいくつかあるし、それ以外にもアドバイザー的な 役割をしているものもあります

イベントのMCやテレビでの解説・実況など タレント活動について

イベントMCは、選手として色々経験してきた中で、大 会やイベントに対して「コレは違うだろう!そんな事したら面白くなくなっちゃうだろう!」とずっと思ってい たんです。そういう時にアドバイスを求められて、アドバイスしたのが始まりです。テレビの方は、選手メイン にやっていた時に解説の仕事を頼まれたんです。90年前 半当時、トライアスロンをきちんと解説できる人が日本にいなかったんですね。それが評判が良く、J SPORTS が起ち上がる時に誘われたんです。
それからテレビの仕事をするようになりました。今では他のスポーツも、解説だけでなく中継もやっています。
上手と言われているのは、好きなモノをきちんと伝えたいという気持ちがあるからです。ただキレイに喋れるだけならプロのアナウンサーの方 がうまいですよね。でも選手としての実感を伴って喋れる人は今でもほとんどいません。それが自分の役割だと思っているし、プロのスポーツ をアスリートとして紹介する、そこにはこだわりたいですね。

人超多忙にも関わらず、3つの事をやっているワケ

「トライアスロンを世の中に広めたい」という目的に向けて、それぞれを相互利用できるからです。アスロニアのビジネスを成功させようと 思ったら、白戸太朗が有名になればなるほどやりやすいですし、喋り手としては、競技はもちろん経営などの経験を積んでいる方が深みが出 ます。イベントで現場に出れば出るほど、ナマの声が聞けるので、プロデュースやコーディネートにも役立ちます。お互いに良い影響を与え合うじゃないですか。選手としても同じで、すべての活動で「選手の目線」がなくなったら意味がなくなってしまいます。なので3つをやっていることは、すべてに相関していて自分の中ではどれもすごく大事なピースです。ただ欠点としては、やることが多すぎて時間がなくなってしまいますが(笑)。

「スポーツナビゲーター」という肩書

ここに僕の活動の根源が入っています。
ずっと選手をやっていて、トライアスロンの「何でこんなに面白いんだろう!スバラシイんだろう!世界観が広がるんだろう!というのを もっとみんなに知ってほしいと思ったんです。それをするには、当然「いい」っていうことを伝えていかなくてはならないですよね。ということは、書いたり喋ったりというタレントっぽいこともしなくてはならないし、ある意味コーチみたいに人に教えてあげなくはならない。 さらにはイベントプロデューサーやコーディネーターの仕事もあるし。じゃあ、コーチなのか?ジャーナリストなのか?タレントなのか? プロデューサーなのか?さらには好きだから人に薦めているのに自分がやっていないのはおかしいですよね。となると、自分が何なのかを 一言で説明するのがすごく難しいんです。そこで、それらをすべて導いていく「案内人」という意味をこめて「スポーツナビゲーター」に しました。97~98年くらいから、自分の肩書をプロアスリートではなくスポーツナビゲーターとして全部の活動を行なっています。

トライアスロンと「Beauty」の関連性は?

競技としてのスポーツは結果を残すことが当然大切です。でも一般的なライフスタイルとしてのスポーツは、それだけではちょっと寂しい。 トライアスロンは比較的年齢層が高くて「大人のスポーツ」なので、それによって自分を高めなくてはならないと思います。人生を豊かに なるからスポーツをやる、また人生が豊かになったからスポーツを続ける、というのが人とスポーツのいい関係だと思います。そうなると「スタイル」もすごく大切で、ライフスタイルはもちろん「容姿」!男女問わず、カッコイイからスポーツをやるし、やってカッコよければハマるし。機材も同じで、「どうせ乗るならカッコイイ方がいいよね!」という気持ちはどこかにあるじゃないですか。トライアスロン は大人のスポーツだから、そのカッコ良さや美しさは追い求めなくてはいけないと思っています。だから、トライアスロンをやっている人たちに言うのは、「カッコ良くいようよ!」。例えばレース後のパーティーに行く時も、短パンとTシャツじゃなくて、少しでいいからおしゃれに気を使おうよと。そういうことで、トライアスロンは、より大人のスポーツになると思います。他のスポーツは、残念ながら「スポーツマンはそんな余計なことはしなくていいよ」みたいな風潮がまだある中で、男女問わずレースの時はもちろん、その前後のスタイル も「カッコよくあるべきだ」と常に思っています。トライアスロンをやっている人たちはおしゃれな人が多いので、そういう方向にいくらでも引っ張っていくことができます。だから女性はキレイであって欲しい。女性がキレイなら男性は嬉しいし、キレイな女性がたくさんレースに出ていれば会場は華やかになるでしょ!なのでその努力もある程度はして欲しいです。もちろん優先順位は競技だけど、「速ければ、強ければいい」だけじゃなくて、その中にどこか「美しく」の意識も大人のスポーツを目指す中では常に持ち合わせて欲しいと思っています。

オンとオフの切替はどうされていますか?

よく訊かれるけど、「切り替えていない」というところがいいのでは?
多分全部「趣味」です。確かにやっている量としては、週末は52週のうち50週は埋まってしまってプライベートの週末は年末年始くらいしかないのが現状です。平日もちょっと練習して仕事して、プライベートの時間は殆どありません。でも、それを「仕事」としてやると辛いですよね。どこかで僕は仕事の中でうまく遊んでいるんです。例えばイベントでも、「こんな所に来られて楽しかったな」と思えるかどうかだけの話ですよ。会社の仕事でもややこしい事はたくさんありますが、結局は「好きな事をやっている」から、あんまり仕事と思っていません。そう思っていないからこそ続いているんだと思います。

座右の銘を教えてください

「Take it easy」
難しく考えないで、肩の力を抜いて「何とかなるよ」「気楽に 行こうぜ」。世界中すべての言語に同じ意味の言葉があるんですよ!これは人間の真髄にあると思っています。どうせ同じことが起こるなら、無いものであれこれ考えるよりは、「何とかなるんじゃないの?」と思ってた方が幸せですしね。 以前レースでスタート時に足の人差し指を折ってしまった事が あるけど、「観客が見ているし(笑)、とりあえずあそこまでがんばって、そこで考えよう」を繰り返して、そのまま完走したこともありますよ。

今後の活動は?

日本でアイアンマンレースをやることを今年から始めました。
第一回目は2013年8月に北海道で行ないました。
道だけで200km、それを17時間確保するなど規模も大きいので簡単ではなかったでしたが、これを何とか日本に定着させたいです。お金も人も何もかもが大変なので、今まで誰も手を出さ(せ)なかったんです。だからこそ僕みたいな「アイアンマンレースってスゴイな!」と思っていて、たまたまできる環境を持っている人間がやらないと、多分誰もやらない(できない)と思います。これが自分の使命です! あとは、それと対極にある、「とことん楽しんでやろう」「日本じゃできないユルユルの」トライアスロンをホノルルでやっています。例えば、ホノルルマラソンはまさにそのスタンスで、「ホノルルマラソンでマラソンデビューした」人がものすごく多いですよね。そこで マラソンの楽しさを知って日本の大会に出てる人がたくさんいます。トライアスロンを広めていくにはそういう大会も必要だと思います。

人生で大切なものを円グラフで表してください。

人生において一番プライオリティが高いのは「仲間」。これは家族・友人も含めて自分の人間関係が一番大事です。その中にトライアスロンがあります。なので、僕の場合はシンプルにこれだけです!

Profile
白戸太朗 Shirato Taro

元クロスカントリースキーの選手。トレーニングで始めたトライアスロンにハマり、現在はその魅力を伝えるために世界中を飛び回る。その拠点として「アスロニア」を東京代官山( 現在は千駄ヶ谷に移転 )に立ち上げ、またスポーツ中継の実況・解説、イベントのMC、イベントプロデューサー・アドバイザーとしても活躍中。 「挫けない力 ~逆境に負けないセルフマネジメント術~」など著書も多数。

ATHLONIA: http://athlonia.com
オフィシャルサイト: http://www.maidotaro.com/
ブログ: http://blogs.yahoo.co.jp/maidotaro