sealer del sol (シーラーデルソル)

Guapo!WEBマガジン[グアッポ!]

vol.35

挑戦する気持ちを持ち続けることが大事

プロスノーボーダー浅沼 妃莉

photograph / Shuji Tonoki
text / Rika Okubo
Episode1

エクストリームスポーツが熱い。スポーツでありながら音楽やファッションの文化においても大きな影響力を持つばかりでなく、その競技性や人気から、オリンピック種目にも続々と採用されていることは既知の方も多いであろう。その代表格がスノーボードと言える。ソチ五輪、平昌五輪と新種目が採用され、今最も注目を集めるカテゴリーであるスノーボードの中でも特にダイナミックでスリリングな、スロープスタイル・ビッグエアーで世界を戦う注目若手選手、それが浅沼妃莉である。

中学二年生でプロに昇格、世界ジュニア選手権を戦う現在16歳だ。 柔らかい印象の華奢な彼女が一転、競技となるとダイナミックに激しくスノーボードで滞空する様は、まさにサプライズである。

「スノーボードを始めたのは5歳くらいかな?両親ともスノーボードをやっていて、とても環境が身近だったんです。母は水泳もやらせたかったみたいで、水泳もやっていたんですけど、実はそれなりにできちゃって。どちらの選手としてやっていこうかなって迷った挙句、スノーボードでいきたいなって。妹は水泳を続けていて、シンクロをやっているんですよ。私のスノーボードにはいつも父がついてきてくれたんですけど、父の周りにはスノーボードをやる方が多くて、キッカー(ジャンプ台)を飛んでいるのをみて自然と私もやりたいなって。」

Episode2

一つ一つ噛み砕くように言葉を選んで、丁寧に発言する彼女には、笑顔の中にも強い芯を持つ印象を感じた。 「普段はとても優柔不断で、洋服もいつまでも決められないタイプなんです。自分の長所や短所?考えたこともないや・・・。ただ、苦しい時も笑っている方が楽だなといつも思っていて。雰囲気も良いし、笑っていた方が何でもできる気がするんですよね。周りからスノーボードって楽しそうだなと思ってもらいたいし。もちろんめっちゃ泣いたりするようなこともあるんですけどね。まあ、色々あります。」

現在高校二年生の浅沼は、競技に集中するため親元を離れ一人暮らし中だという。 「高校は、競技に集中するため自由に動きやすい環境を重視して決めました。寮に入ると時間が限られてしまうので、なるべく練習環境に近い場所をと考えて一人暮らしをしています。 高校へは高速バスで通っているんです。学校が終わったら、ウエイトトレーニングに行くか、練習施設で2時間くらい練習して帰ります。それから料理をしたり洗濯をしたり…結構忙しいですね。でも、中学の頃から競技のために一人で動くこともあったので、この環境には慣れているかもしれません。母が栄養士の資格を持っているので栄養バランスのことを色々教えてもらいながら、炭水化物やたんぱく質を食べるタイミングなども意識しています。」

Episode3

目的に向かって明確な意思を持つ印象の彼女だが、やはりその思いは強い。 「環境を整えたい、そのためにこういう形で動きたい、という風に自分自身で決めていった方が人脈も広がるし、助けてくれる人も現れると思っているんです。全て自分に跳ね返ってくることだけど、それでも自分の責任で動いていきたいタイプです。」

13歳の時にプロに昇格し、以来着実に結果を出し、歩みを進めてきた。 「この環境は普通じゃない。周りの人、一番は両親にきちんと感謝して、必ず恩返しできるように頑張りたいです。恩返し?それはもちろん結果ですね。Xゲーム、オリンピックで優勝することだと思っています。」

Episode4

“アイスを買ってあげるから”と父親に言われ、アイスクリーム欲しさにスノーボードを続けていた幼少期をほほえましく思い出すほど、いつの間にか浅沼にとってスノーボードはなくてはならないものになっていた。

「正直、小さい頃は無理やりやらされている感もあったんです(笑)。でも、続けていく過程でやめることは選択肢になかった。特に、中学一年の時に今のコーチと出会えたことで意識が変わりました。今フィジカルを見てもらっているトレーナーさんもすごく合っていて、コンディションはとても良いです。努力の積み重ねで結果が出るというのがとても楽しいし、その先に達成感があると思います。」先シーズン、浅沼は自身の課題をみつけた。

「コーチに(採点競技ということもあり)周りのコンディションや試合結果に合わせて守りに入っていることを指摘されたことがあったんです。周囲は関係なく、自分が高みに挑戦していくことが大事だと。以来、いつも強い気持ちでチャレンジしていくことを意識しています。公開練習ではやらないレベルのことにトライして、きちんとメイクできた時はとても爽快でした。それで失敗してしまい、怪我をしてしまったこともあったんですが後悔していない。挑戦する気持ちが今一番重要だと思っています。」 彼女が努力を積み重ね、世界の頂点を掴む日それは、世界の誰でもなく自分に勝つ日なのかもしれない・・・そう思った。

Profile
浅沼 妃莉 Hinari Asanuma

2002年11月14日生まれ。
岩手県出身。宮城県村田町在住。東北高校2年生。ムラサキスポーツ北海道所属。2019世界ジュニア選手権スロープスタイル6位、ビッグエアー7位。2019/2020 全日本スキー連盟強化指定選手(スノーボード・スロープスタイル/ビッグエアー)。